PMDD(月経前不快気分障害)とは?
PMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder) は、月経前不快気分障害と訳される、PMS(月経前症候群) の中でも特に精神的症状が重いタイプの疾患です。単なるPMSとは異なり、うつ病や不安障害に近い深刻な精神的症状を伴うことが特徴です。
PMDDの主な症状
PMDDの症状は、月経前の1〜2週間に現れ、月経が始まると改善または消失します。
● 精神的症状(必須症状)
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抑うつ感(強い悲しみや絶望感)
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激しい怒りやイライラ
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強い不安や緊張
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極度の感情の起伏
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自分を責める思考
● 身体的症状
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頭痛や腹痛
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胸の張りや痛み
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むくみや体重増加
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疲労感や倦怠感
● 行動的症状
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睡眠障害(不眠または過眠)
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過食や食欲不振
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集中力の低下
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他者とのトラブル
PMDDの原因
PMDDの明確な原因は完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています。
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ホルモンバランスの変動
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月経周期に伴うエストロゲンとプロゲステロンの急激な変化が脳に影響を及ぼします。
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セロトニンの低下
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セロトニンは脳内の神経伝達物質で、感情の安定に関わります。
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PMS期にはセロトニンの分泌が減少し、うつ症状や不安感を引き起こします。
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遺伝的要因
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家族にPMSやPMDDを経験した人がいる場合、発症リスクが高まるとされています。
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心理的・社会的要因
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ストレスや過去のトラウマ、対人関係の問題などが悪化要因になることがあります。
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PMDDの診断基準
PMDDの診断は、**DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)**に基づいて行われます。
以下の症状のうち、5つ以上が月経前に現れ、日常生活に重大な支障をきたしていることが基準となります。
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著しい情緒不安定
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顕著なイライラや怒り
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重度の抑うつ気分
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強い不安や緊張
さらに、身体的症状や行動の変化も伴うことがあります。
PMDDの治療法
PMDDの治療は、薬物療法と心理療法を組み合わせて行うことが一般的です。
● 1. 薬物療法
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SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
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セロトニンの量を増やし、抑うつや不安を軽減します。
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フルオキセチンやセルトラリンなどが用いられます。
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低用量ピル
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ホルモンの変動を抑え、精神症状を軽減します。
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ジェスチン系のピルが有効です。
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抗不安薬
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一時的な不安や緊張が強い場合に処方されます。
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漢方薬
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加味逍遙散や当帰芍薬散が精神症状や身体症状の緩和に有効です。
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● 2. 心理療法
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認知行動療法(CBT)
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ネガティブな思考や行動パターンを修正し、ストレスに対処する方法を学びます。
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ストレスマネジメント
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瞑想やヨガ、呼吸法などを取り入れることで、リラクゼーションを促進します。
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日常生活での対策
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規則正しい生活習慣を維持
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バランスの取れた食事(カフェインやアルコールの摂取を控える)
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軽い運動を取り入れる(ウォーキングやストレッチ)
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十分な睡眠を確保
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ストレス管理を意識
まとめ
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PMDDは、PMSの中でも特に精神的症状が強く、日常生活に支障をきたす状態を指します。
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SSRIや低用量ピルを用いた薬物療法や、認知行動療法を中心とした心理療法が有効です。
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早期に適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。
もし疑いがある場合は、婦人科や心療内科を受診し、医師と相談することをおすすめします。