中枢性睡眠時無呼吸

中枢性睡眠時無呼吸(CSA)とは?

中枢性睡眠時無呼吸(CSA: Central Sleep Apnea)は、脳の呼吸をコントロールする部分に問題が生じ、睡眠中に正常な呼吸が行えなくなる病態です。この状態では、呼吸を制御する信号が脳から筋肉にうまく伝わらず、呼吸が停止します。OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)とは異なり、気道に物理的な閉塞がないため、気道は開いていますが、脳からの呼吸信号が欠如しています。


中枢性睡眠時無呼吸の仕組み

  1. 脳からの呼吸信号の停止

    • 呼吸をコントロールする脳の中枢(延髄や橋)から、呼吸筋に信号が送られず、呼吸が止まります。
    • この状態は数秒から数十秒続き、再び脳が呼吸を再開する信号を出すことで、呼吸が回復します。
  2. 無呼吸と低呼吸の反復

    • 睡眠中に無呼吸や浅い呼吸が繰り返されるため、十分な酸素供給がされません。
    • 酸素の供給不足は、血液中の酸素濃度を低下させ、脳が警告を出すことで目が覚めることがあります。

中枢性睡眠時無呼吸の原因

中枢性睡眠時無呼吸は、以下のような原因で発症します。

1. 心不全

  • 慢性心不全が原因で中枢性睡眠時無呼吸を引き起こすことがあります。
  • 心臓が効率的に血液を送れなくなると、脳の呼吸調整機能に影響を与えることがあります。

2. 脳の障害

  • 脳卒中脳腫瘍脳炎など、脳の障害が呼吸調節機能に影響を与えることがあります。
  • 脳の中枢が正しく働かないことで、呼吸信号が送られないことがあります。

3. 高山病

  • 高高度に長期間滞在することが原因で、低酸素状態が続き、脳が呼吸調整信号を送ることが難しくなり、無呼吸が発生することがあります。

4. その他の神経疾患

  • 神経筋疾患(例:筋ジストロフィー、ALSなど)も中枢性睡眠時無呼吸を引き起こすことがあります。

中枢性睡眠時無呼吸の症状

  • いびき:いびきがない場合が多い(OSAのように大きないびきは発生しない)。
  • 無呼吸のエピソード:睡眠中に呼吸が停止し、その後急に呼吸が再開される。
  • 日中の眠気や疲労感:十分な睡眠が取れないため、昼間の眠気や集中力の低下が起こります。
  • 起床時の息切れや胸の圧迫感:呼吸が停止することで、目覚めるときに息苦しさを感じることがあります。
  • 夜間の頻繁な目覚め:脳が呼吸の再開を促すため、夜間に目を覚ますことが多いです。

中枢性睡眠時無呼吸の診断

中枢性睡眠時無呼吸の診断には、以下の方法が用いられます。

1. 睡眠ポリグラフ検査(PSG)

  • ポリグラフ検査は、睡眠中の呼吸、心拍数、脳波、筋肉の活動などを同時に測定します。
  • 無呼吸の回数や、呼吸の停止の仕方が評価されます。

2. ホームテスト

  • 自宅で簡易的に行える呼吸のモニタリング機器もあります。
  • 睡眠中の呼吸の停止や酸素レベルを確認することができます。

中枢性睡眠時無呼吸の治療法

1. CPAP(シーパップ)療法

  • CPAPは、気道を開放するために使用される機器ですが、中枢性睡眠時無呼吸に対しては、別のタイプの装置が使用されることがあります。
  • BiPAP(バイパップ)ASV(Adaptive Servo-Ventilation)など、呼吸のパターンを補完する装置が使用されることがあります。

2. 薬物療法

  • 薬物(例えば、心不全によるものでは、ACE阻害薬利尿剤など)を使用して、心臓や呼吸の状態を改善することがあります。

3. 外科的治療

  • 脳や神経系に問題がある場合、外科的治療が必要となることがあります。
  • 脳の障害や脳卒中後の回復の一環として、呼吸調節を助ける手術が行われる場合があります。

中枢性睡眠時無呼吸の予防

中枢性睡眠時無呼吸は、心不全や脳の疾患が原因で発症することが多いため、以下の予防策が重要です。

  • 心臓や脳の健康管理:定期的な健康チェックや治療を受けることが重要です。
  • 適切な体重管理:肥満や過剰体重は、呼吸を補助するための機能を低下させます。
  • 高地環境に注意:高山病を防ぐため、高地に長期間滞在する場合は十分な酸素供給を行うことが大切です。

中枢性睡眠時無呼吸は、脳や神経の機能に関連した疾患であり、適切な治療を受けることが必要です。症状が見られる場合、早期に医師に相談し、適切な検査や治療を受けることが重要です。

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