食欲抑制薬についての解説
食欲抑制薬は、脳の食欲中枢に作用し、空腹感を抑えることで食事量を減らし、体重を減少させる薬です。主に、肥満症や過食症などの治療に使用され、BMIが30以上、またはBMI27以上で肥満関連疾患がある場合に処方されます。
食欲抑制薬の作用機序
食欲抑制薬は、主に脳内の神経伝達物質に作用して食欲を抑えます。
具体的には、以下の3つの経路で作用します。
- ノルアドレナリンの増加
- 交感神経を活性化し、食欲を抑制します。
- セロトニンの増加
- 満腹感を感じやすくし、過食を防ぎます。
- ドーパミンの調整
- 報酬系への作用により、食事への過度な欲求を抑えます。
代表的な食欲抑制薬
◇ 1. マジンドール(商品名:サノレックス)
- 日本で唯一承認されている食欲抑制薬。
- 視床下部に作用し、食欲を抑制します。
- BMI35以上の高度肥満者向け。
- 使用期間は通常3か月まで。
副作用
- 動悸、不眠、便秘、口渇、依存症のリスク
◇ 2. セマグルチド(商品名:ウゴービ)
- GLP-1受容体作動薬としての役割も持つ薬。
- 血糖値を調整しつつ、脳の満腹中枢に作用して食欲を抑えます。
- 肥満治療や糖尿病治療にも使用。
副作用
- 吐き気、腹痛、便秘、低血糖
◇ 3. リラグルチド(商品名:サクセンダ)
- 同じくGLP-1受容体作動薬で、皮下注射により投与します。
- 中枢神経に作用して食欲を抑え、体重減少を促進します。
副作用
- 頭痛、吐き気、便秘、胃腸障害
食欲抑制薬の使用基準
食欲抑制薬は、以下のような状況で医師が処方します。
- BMI30以上の高度肥満
- BMI27以上で肥満関連疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)がある場合
- 食事療法や運動療法を6か月以上継続しても十分な効果が得られない場合
使用上の注意点
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医師の指示を厳守
- 自己判断での服用は避け、定期的な診察を受けながら使用します。
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依存性への注意
- 特にマジンドールは依存のリスクがあるため、長期使用は避けます。
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副作用への対処
- 動悸や不眠などの副作用が見られる場合は、すぐに医師に相談しましょう。
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生活習慣の改善との併用
- 食欲抑制薬のみでの治療は効果が限定的です。
- 食事管理や運動を併用することが推奨されます。
まとめ
食欲抑制薬は、肥満治療の補助的な役割として有効です。
ただし、長期間の使用や誤った使い方はリスクを伴うため、医師の指示のもとで適切に使用することが重要です。
同時に、バランスの取れた食生活や適度な運動を続けることで、より効果的な体重管理が期待できます。