帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう、Postherpetic Neuralgia:PHN)とは、帯状疱疹の発疹が治ったあとも、神経の痛みが長期間続く状態です。帯状疱疹の最も代表的かつ厄介な合併症で、特に高齢者に多く見られます。
帯状疱疹後神経痛とは?
定義:
帯状疱疹に続く皮膚病変の治癒後 90日以上持続する神経性の痛み
(診断基準として、1か月~3か月以上の持続を基準とすることもあります)
好発年齢・リスク因子
リスク因子 | 説明 |
---|---|
高齢(60歳以上) | 加齢で神経の再生力が低下するため |
発疹の重症度 | 水疱や炎症が強い場合、神経障害が起こりやすい |
急性期の痛みの強さ | 急性帯状疱疹時の痛みが強いほど、PHNのリスクが高い |
抗ウイルス薬の開始が遅れた | 72時間以内に治療を開始しないと神経損傷のリスク上昇 |
免疫力の低下 | 糖尿病、がん、免疫抑制剤使用者など |
症状
症状のタイプ | 説明 |
---|---|
持続痛(burning pain) | ヒリヒリ、ジンジンと常に痛む |
発作痛(shooting pain) | 電撃のように一瞬ズキンとくる痛み |
アロディニア(Allodynia) | 軽く触れただけで激しい痛みが出る(触覚過敏) |
痒み(かゆみ) | 痛みとともに慢性的な掻痒感も出ることがある |
※ 皮膚は見た目は治っていても、神経自体がダメージを受けているため痛みが続きます。
病態生理(なぜ痛みが続くのか)
- 帯状疱疹ウイルスが神経節や末梢神経に強い炎症を起こす
- 神経が損傷・変性し、異常な興奮を起こすようになる
- 脳や脊髄の痛みの感じ方(痛覚処理)にも変化が起こる(中枢性感作)
治療
目的:痛みの緩和、生活の質(QOL)改善
薬剤カテゴリー | 主な薬剤 | 備考 |
---|---|---|
神経障害性疼痛治療薬 | プレガバリン(リリカ®)、ガバペンチン | 神経の異常興奮を抑える |
三環系抗うつ薬(TCA) | アミトリプチリン、ノルトリプチリン | セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用あり |
SNRI | デュロキセチン(サインバルタ®) | うつ症状や睡眠障害がある人にも有効 |
外用薬 | リドカインパッチ、カプサイシン軟膏 | 局所の痛みに有効。全身作用が少ない |
その他 | トラマドール、NSAIDs(補助的) | 難治性や短期的な痛み対応 |
予防
- 帯状疱疹の発症自体を防ぐことが最も有効な予防策
- シングリックス®ワクチン(不活化ワクチン)
- 50歳以上、または免疫低下状態の成人に推奨
- 2回接種で90%以上の発症予防効果
- PHNの発症も大幅に減少
経過・予後
時間経過 | PHNの発症率(概算) |
---|---|
帯状疱疹発症者全体 | 約10〜20%がPHNに |
高齢者(70歳以上) | 30%以上 |
若年者(40代以下) | 5%未満 |
ほとんどの人は6〜12か月以内に軽快しますが、一部は数年以上慢性痛として残ることもあります。
補助療法・代替治療
- 神経ブロック(星状神経節ブロックなど)
- 鍼治療、理学療法(痛みのある部位の感覚調整)
- 心理療法(慢性痛に伴う不安・抑うつへの対応)
まとめ:PHNの要点
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | 帯状疱疹による神経の損傷 |
症状 | ヒリヒリ・ピリピリ・触るだけで痛い |
治療 | 神経性疼痛薬(プレガバリン・TCA・SNRIなど)+外用薬 |
予防 | 早期の抗ウイルス治療+ワクチン接種 |
慢性化対策 | 多剤併用+心理的・身体的サポート |
投稿 帯状疱疹後神経痛 は メプラス - MEPLUS に最初に表示されました。